ドライヤーで温めていたもの

C777_hi私は実家で親と同居しています。
妻と小さい子供達もいます。
子どもたちは風呂に入ったあと、はしゃぎ回ってなかなか服を着なかったりすることが多いです。風邪でも引かないかと私はいつも心配しています。
しかし、私以上に心配していたのが母でした。私の母は、自分にとって孫にあたる子どもたちが風呂から上がるやいなや、洗面所においてあるドライヤーを取ってきて居間に戻り、仁王立ちして孫達の様子をじっと観察し始めます。
なかなか服を着ない場合は早くしないと風邪を引くと注意して子どもたちの作業を早めます。その後服を来た子から順に、持ってきたドライヤーを構え、髪の毛をていねいに乾かし始めるのです。
母にとってはその時間がどんなものだったのかは、本人の感想が聞けなくなった今となっては想像してみるしかありません。去年の秋、母はガンで他界しました。まだ小さい孫達を最後まで可愛がり、クリスマスプレゼントを注文した後、数日してから息を引き取りました。葬儀の後、私達は元の生活に戻るよう努力しました。四十九日がすぎ、母の死が話題にのぼる機会も減ってきて、しだいに日常が戻ってきたように思いました。
しかし、それに応じるように、母が日常で行ってきたことが浮き彫りになってきました。何気なく子どもたちと一緒に風呂に入ったあと、ドライヤーを構えている母がもういないことに気付かされる……。それは、私の心に風が吹くような感覚でした。

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